私は自分をノンセクシュアルだと自認しています。
人を好きになる気持ちはあるし、大切に思う相手もいます。けれど、身体の関係に対しては強く欲求を感じませんし、スキンシップにもかなり慎重です。
そんな自分にとって「いつ結婚するの?」「いい人いないの?」という言葉は、ただの世間話では終わりません。
結婚の話が出るたび、相手と身体の関係を結ぶかどうか、その前提から説明しないと理解されない気がして、胸のあたりがぎゅっと重くなります。
わざわざ親戚の前で、自分の身体の感覚や嫌悪感まで話したくはありません。
けれど黙って笑ってやり過ごすだけでは、自分を否定しているようで苦しくなる場面もあります。
ここでは「結婚を急かされる側」の視点から、急かし方の違いを見分けるヒントや、説明を短く保つ言い回し、自分を守るラインの引き方を一緒に考えてみたいと思います。
「急かし」の正体を見分ける
結婚を急かされる場面にも、いろいろなパターンがあります。
全部が全部「悪意」ではないからこそ、余計に戸惑います。
例えば「あなたに寂しい思いをしてほしくないからさ」と言う親は、本気で心配している場合があります。
一方で、「親戚の目があるから」「そろそろ孫の顔が見たい」と口にする人は、自分の安心や世間体を守りたいだけの時もあります。
どちらにしても、言われた側がしんどいのは変わりません。
それでも、心の中でラベルを貼っておくと少し楽になる場面があります。
- 相手の「不安」から出ている言葉なのか
- 自分の「価値観」を押しつけているだけなのか
- ただの話題づくりなのか
どのタイプなのかを、まずは自分の中だけで仕分けてみる。
「この人は好意から言っているけれど、今の自分には重たいな」
「この人は自分のペースで生きてきただけなんだな」
そうやって相手の背景と自分のしんどさを、少し離れて眺めてみる練習です。
相手の意図を理解するためではなく、「全部を真正面から受け止めなくていい」と、自分に許可を出すための作業だと考えてみてもいいかもしれません。
説明を短く保つ言い回しのストック

本当は、「性的な同意がない結婚はつらい」「身体に触れられたくない日が多い」といった本音を、丁寧にわかってほしい気持ちがあります。
ただ、親戚の集まりや職場の飲み会で、そこまで踏み込んだ話をするのは消耗します。
そんな場面では、「今この場で話す必要のある範囲」と「親しい人だけに伝えたいこと」を分けて考えてもいいと思います。
ここでは、表向きに使える“短い返事”の例をいくつか挙げておきます。
- 「今はひとりの時間が心地よくて、急いでいないんです」
- 「人との距離感にこだわりがあって、ゆっくり考えたいんです」
- 「結婚の形にあまりピンときていなくて、別の生き方も検討中なんです」
- 「身体のことも含めて慎重に考えたいので、今は様子を見ています」
大事なのは、「自分を否定しない言い方」を選ぶことです。
「私なんか」「どうせ無理だから」と自虐にしてしまうと、自分の感覚を自分で踏みにじってしまいます。
相手にすべて理解してもらう必要はありません。
せめて、自分だけは自分の感覚を味方する。
そのための“合言葉”を、いくつかポケットに入れておくイメージです。
親族行事で自分を守るライン
お正月や冠婚葬祭の場は、「結婚は?」「孫は?」が飛び交いやすいシーンです。
そこに毎回一人で立ち向かうのは、かなり消耗します。
私が少し楽になったのは、「その場のルール」を自分側にも決めたときでした。
例えば、こんなラインです。
- 同じ質問には、同じ返事で終わらせる
→「今は考え中です」で一貫する - しつこく聞かれたら、話題を変えてもいい
→「そういえば最近、◯◯さんのお仕事どうですか?」など - 心から話せる味方を一人だけ決めておく
→事前に、「しんどくなったら合図するね」と共有しておく
それでも限界を感じるときは、その場から物理的に離れる勇気も必要です。
トイレに立つ、庭に出る、スマホを見に席をはずす。
それだけでも、身体の強張りが少しゆるむ瞬間があります。
「親族行事だから、最後まで笑顔でいなければならない」というルールは、誰かが決めたわけではありません。
自分を守るために、途中で抜ける権利も持っていていいのだと思います。
暮らし方の幅を把握する(事実婚・別居婚・友情結婚)

結婚の話になると、多くの人が思い浮かべるのは「同じ家に住んで、夫婦として暮らす」イメージかもしれません。けれど実際は、その形だけがすべてではありません。
例えば、法律婚ではなく、事実婚を選ぶ人もいます。
書類上の手続きよりも、生活の中身やパートナーシップの質を優先する生き方です。
同じ屋根の下で暮らさずに、お互いの家を保ったまま関係を続ける別居婚を選ぶ人もいます。一人の時間や空間が必要な人にとっては、距離のある安心感が支えになる場合もあります。
また、「恋愛感情や性的な関係が前提ではないパートナーシップ」を選ぶ人もいます。
家族のような信頼を軸にして、一緒に暮らすかどうかや将来のことを話し合う、友情に近い関係性です。
もちろん、どの形にもメリットと難しさがありますし、「結婚しない」選択も含めて、正解はひとつではありません。
大事なのは、「自分の身体の感覚」「安心できる距離」「大切にしたい価値観」に合う形が何か、ゆっくり見つめていくことではないでしょうか。
「結婚を急かされるたびに、身体の話から全部説明しなきゃいけない」と感じていると、息が詰まってしまいます。一方で、「私には私のペースと感覚がある」と心の中で言い直せたとき、世界が少し広く見える瞬間があります。
誰かに急かされたタイミングは、自分の生き方を見直すきっかけにもなります。
もし今、似たようなモヤモヤを抱えているなら、今日挙げた言い回しやライン設定の中から、ひとつだけでも試してみませんか。
「自分の身体への同意は、自分が決めていい」という前提を、そっと自分の側に引き寄せながら。




