性欲の少なさを“理由づけ”されてしまうあなたへ。
「性欲がほとんど湧かなくて」と話すと、相手が少しだけ眉を上げる。
そして、ためらいもなくこう言うのです。
「それって宗教の影響?」
「育ちが厳しかったとか?」
「トラウマがあるの?」
私は、いわゆるノンセク寄りです。
恋愛感情はあるし、好きな人を大切に思う気持ちはちゃんとある。
でも、性行為への興味はあまり湧きません。
そのシンプルな“体質”に、他人が勝手に理由を当てはめようとしてくる。
それに、長い間うまく言葉を返せませんでした。
「違うよ」と否定しても、「じゃあ何で?」と追求される。
理由を探されるたびに、私の気持ちそのものが“解明すべき問題”として扱われているようで、そっと心を閉ざしたくなるのです。
あなたにも、似た経験はありますか。
もしあるなら、その違和感に名前をつけてもいいのだと思います。
“勝手な物語を押しつけられる痛み”。
“存在そのものを説明させられる疲れ”。
今日はその重さを、いっしょにほどいていきたいです。
原因探しより現在の快・不快に焦点を当てる
「なぜ興味がないのか」は、たしかに気になるテーマです。
でも、その問いはしばしば、
「普通は性欲があるべきなのに、あなたにはない。その理由を説明して?」
という圧力に化けます。
私自身、原因を探された時期があります。
「幼少期?」「育てられ方?」「元恋人との関係?」
聞かれ続けているうちに、
“性欲が弱い自分=どこか欠けている存在”
のように感じて、胸がきゅっと縮こまりました。
そんなとき、心療内科の先生に言われたことがあります。
「原因探しは一旦置いておいて、今どうしたら安心できるかを優先しましょう」
その言葉で、肩の力がすっと抜けました。
たとえば、食の好みは説明できなくても尊重されますよね。
「甘いものが好き」「辛いのは苦手」
そこに背景を追及する人はあまりいません。
親密さの感じ方も同じです。
「これが心地よい」「ここは不快」
それだけで、本当は十分なのです。
原因より、現在の感覚。
「私は性的な距離はこのくらいが安心します」
たったそれだけで、生きていていい。
そう思えたとき、他人の決めつけも少しだけ軽くなりました。
決めつけをかわす返答集

「宗教なの?」
「トラウマある?」
「なんで?」
こうした質問には、悪気がない場合もあります。
ただ、受け取る側には重い。
私は何度も言葉に詰まりました。
あるとき、事前に“返答のストック”を作っておくと楽になると知り、
少しずつ自分に合うフレーズを集めました。
今日は、その中でも負担が少なく、角が立ちにくかったものを紹介します。
「体質に近いんだと思うよ」
相手の追求を止めやすい、シンプルな答え。
食の好みの話に近い感覚で伝えられます。
「安心できる距離を大切にしてるだけだよ」
“理由”ではなく“価値観の話”に変換することで、説明責任から離れられます。
「宗教とかじゃなくて、生まれつき恋愛と性欲があまり結びつかないだけ」
やさしいニュアンスで、“誤解だけ訂正する”形。
「深刻な話ではないよ。普通に楽しく過ごせてるから大丈夫」
「問題なの?」と思われそうな空気を先に落ち着ける返しです。
(追求が続くとき)「理由の分析より、どうしたら心地よい関係が作れるかを話したいな」
相手を責めずに、話題の方向を変えられます。
“かわす”スキルは、とても大事です。
説明しすぎると、相手はますます「理解しよう」として踏み込みすぎてしまいます。
あなたが守りたい境界線を維持するためにも、軽く流せる言葉を持っておくのは、ひとつの防具になります。
距離を取る権利と安全の確保
もし決めつけや追求がしつこい相手なら。
あなたは距離を取っていいです。
これはわがままではなく、“安全”のための対応です。
私にも一人、どうしても境界線を守れない人がいました。
「なんで?」「どこが嫌なの?」「治したいと思わないの?」
その人は“理解しよう”としているつもりで、実は私の心の中に土足で入り込んでいました。
ある日、私は限界を迎えました。
相手からの長文メッセージに心臓がどきどきして、スマホを見るのもつらかったのです。
そのとき初めて、
「私は安全のために距離を取っていい」
と思えました。
実際にやったことは、こんな小さなステップでした。
- 返信の頻度を落とす
- 夜は通知を切る
- 会う回数を減らす
- 信頼できる友達に状況を共有しておく
距離を取ると、相手から冷たく思われるかもしれません。
でも、あなたがあなたの心を守ることは、誰にも否定できません。
本当に大切なのは、
「自分のペースで生きていい」という感覚を取り戻すこと
です。
中立な枠組みを知る(友情結婚・共同生活)

恋愛や性の話になると、「普通はこう」という圧がどうしても強くなります。
その結果、性欲の少ない人は「背景があるはず」「理由を説明して」と扱われがちです。
でも、世界はもっと広くて、多様な関係性があります。
たとえば、
友情結婚(恋愛や性より生活のパートナーとして共に暮らす関係)
共同生活(家族的な安心を優先する暮らし方)
など、“性”を軸にしないパートナーシップも確かに存在しています。
私自身、こうした枠組みを知ったときに、
「私はおかしいんじゃなくて、ただ“カテゴリーが違う”だけなんだ」
と肩の荷が軽くなりました。
“恋愛して、性行為して、結婚して、家族になる”
という一本道だけが人生ではありません。
関係性の形は、自分で選んでいい。
自分の心地よさを優先していい。
あなたが安心して生きられる枠組みを知ることは、
自分の人生を取り戻すひとつのステップになると思います。
「宗教なの?」と決めつけられたときの、あの小さな刺さり方。
「違うよ」と言った瞬間に求められる説明の重さ。
あれは、あなたが悪いのではありません。
ただ、世界の側がまだ“多様な在り方”を十分に想像できていないだけです。
あなたの心地よさは、あなただけのものです。
誰かに証明する必要も、理由を説明する義務もありません。
どうか今日、ひとつだけでも選んでみてください。
原因より“今の感覚”を大切にすること。
返答のストックを一つポケットに入れておくこと。
距離を取る権利を思い出すこと。
自分が安心できる枠組みを知ること。
あなたの人生は、“説明されるため”にあるのではなく、
“安心して生きるため”にあります。







