「私はノンセクです」
この言葉を知ったとき、ようやく胸の奥につかえていたものに名前がついた気がしました。
誰かを好きになることはある。けれど、それが必ずしも身体的な親密さにつながるわけじゃない。そんな自分をどこにも出せなくて、恋愛アプリに登録しても、すぐに閉じたくなる自分がいました。
今回は、恋愛アプリが「なんとなく怖い」と感じてしまう理由を、自分の体験と一緒に言葉にしてみたいと思います。
プロフィールに書けない違和感を言語化する
恋愛アプリに登録すると、まずプロフィールを書く画面が出てきます。
年齢、趣味、休日の過ごし方。
そして「どんな関係を求めているか」。
この項目に、私はいつもつまづきました。
恋人?結婚?遊び相手?どれも、少し違う。
かといって、何も書かないと「なんのためにここにいるの?」という雰囲気になってしまう。
本当は「話が合う人と、ゆっくりと心を通わせたい」と思っている。でも、それをどんな言葉にすればいいのかわからない。
「ノンセクです」と一言書いても、それが誤解されたり、変なメッセージのきっかけになったりすることもあります。
だから、書けない。
書けないまま「自分には向いていないのかも」と思って画面を閉じてしまう。
プロフィールを通して伝えられることと、伝えられないこと。その間にある違和感が、じわじわと不安に変わっていくのを感じます。
初回メッセージで起きやすい摩擦を避ける

やっとの思いでマッチした相手との初めてのメッセージ。
「はじめまして!ノンセクってどういう意味ですか?」
悪気はないのだと思います。けれど、それを一番最初に尋ねられると、心がざわついてしまうのです。
説明しないと始まらない関係って、どこか疲れてしまう。知識がないことは責めないけれど、配慮がないとしんどさが残ります。
「そのことをすぐに聞いてくるのはちょっと怖い」
「自分のペースで話せるようになるまで、待ってくれる人がいい」
そんな願いを持っているのに、最初の数行でジャッジされてしまう世界では、安心して言葉を重ねていくことが難しく感じます。
やりとりを通して少しずつ関係を築くのではなく、「条件のすり合わせ」から始まるやりとり。
そのスピードに置いていかれる感覚が、恋愛アプリを怖くさせているのかもしれません。
会う前に共有する境界線
「今度、会ってみませんか?」というお誘いをもらったとき、うれしさと同時に、ふわっと警戒心が立ち上がることがあります。
どこまでを期待されているのか。手をつなぐ?キス?それ以上?
私は「会うこと=何かが始まる」ではなく、「まずは話してみる」という感覚でいたい。でも、それをうまく言えないまま会うと、お互いにズレが生まれてしまうこともあります。
だから私は、会う前にひとつだけ伝えるようにしています。
「性的な関係を前提にした出会いは考えていません」と。
この一文を入れるだけで、相手の反応も変わります。すっと離れていく人もいるけれど、「それでも会ってみたい」と言ってくれる人もいる。
そのやりとりの中で、自分の安心できる境界線が見えてくる気がします。
当事者向けの場と文化を知る

もし、恋愛アプリが「ちょっと怖い」「うまく使えない」と感じているなら、当事者が運営しているサービスや、ノンセクやグレーゾーンを受け入れる前提のコミュニティに触れてみるのもひとつの選択肢です。
そういった場所では、最初から「違和感があるのは当たり前」という前提で話が進みます。
だからこそ、無理に自分を説明しすぎなくても、少しずつ「このままでいいのかも」と思えるようになります。
私自身も、そういった場所で出会った人と、無理のないペースでやりとりを重ねた経験があります。
「好き」の定義も、「親密さ」の形も、それぞれでいい。
そう思える空気が、なにより安心でした。
恋愛アプリだけが出会いの手段じゃない。
「わかってもらえるかも」という感覚を持てる場所を、自分のペースで探していくことは、自分自身を守ることにもつながるのだと思います。
おわりに
恋愛アプリが怖いと感じるのは、単に慣れていないからではない気がします。
自分の感覚を言葉にしきれないまま、「普通」に飲み込まれてしまうような怖さ。
だけど、怖がっている自分を責める必要はないと思います。
「合わないかもしれない」と感じるのも、大切なサインです。
今すぐ答えを出さなくても、少しずつでいい。
あなたのペースで、自分の心にやさしくいられる場所を選んでいってくださいね。







