「老後が不安だから子どもを持ったほうがいい」なんて言葉を耳にしたことはありませんか？
確かに、年を重ねてからも頼れる存在がいるのは心強いことです。しかし、子どもがいるからといって必ず安心できるわけではありません。
むしろ子どもに負担をかけたくない、子ども自身の人生を尊重したいと考える人も多いはず。
子どもを持つかどうかは本来「自分がどう生きたいか」という視点で選ぶものであって、「老後の保険」として決めるものではありません。
老後の安心は子どもの有無だけで決まるものではなく、もっと多様な道があるはずです。子どもだけに頼らない自分らしい老後の備え方について一緒に考えていきましょう。
「子どもがいる＝老後の安心」とは限らない
よく言われるのは「子どもがいれば介護してくれる」「いざというときに頼れる」という考え方。
確かに、親を支える子どもは多く存在します。しかし、現実には子どもがいても老後に孤独や不安を抱える人もいて……
そもそも、子どもが必ずしも親の近くに住むとは限りません。進学や就職、結婚を機に遠方で生活を始めるケースもあるでしょう。
物理的な距離があると日常的な支えは難しくなり、介護が必要になったときもすぐに動けるとは限りません。
また、子ども自身も仕事や育児、経済的な事情に追われ、親の世話まで十分にできないことだってあります。
親子の関係が良好とは限らない可能性もあり、「子どもがいるから安心」とは言い切れないのです。
さらに言えば「自分の人生は自分で責任を持ちたい」「子どもには子どもの人生がある」という考え方のもとで、子どもに頼ることを望まない親も多い。
こうした思いを持つ人にとっては、子どもがいることが老後の安心につながるわけではないのです。
老後の不安の正体
そもそも老後の不安とは、具体的にどのようなことを指しているのでしょうか。大きく分けると、老後の不安は以下のような要素に整理できます。
- 経済的な不安：生活費・医療費・介護費用が足りなくなるのではないか
- 健康の不安：病気やケガで生活できなくなるのではないか
- 介護の不安：介護が必要になったとき、支えてくれる人がいないのではないか
- 孤独の不安：話し相手や相談相手がおらず、孤立するのではないか
そして、これらの不安は子どもがいればすべて解消するわけではありません。むしろ子どもがいても、同じような不安に直面する可能性もあるのです。
だからこそ、大切なのは「自分がどの不安を強く感じているのか」を知り、それに対して1つずつ対策を考えていくこと。
たとえば、経済的な不安が大きいのか、孤独を感じる不安が大きいのか。それを明確にすることで、老後に向けてとるべき現実的な行動がみえてくるでしょう。
子ども以外にも頼れる仕組みはある
子どもがいてもいなくても、老後の安心を得るための仕組みがあります。そういう社会の仕組みをうまく活用して、自分で自分の老後を支える基盤を作ることはできるのです。
まず、年金や介護保険、医療保険といった制度は、誰もが利用できる公的な制度。老後資金の準備をすると同時に、制度を正しく理解し活用できれば、大きな安心材料になるでしょう。
次に、地域や民間のサービス。高齢者向けの生活支援や介護サービスは年々多様化しています。
食事の宅配・買い物代行・訪問介護、最近では「見守りサービス」や「シェアハウス型の高齢者住宅」も注目されるなど、家族に頼らなくても暮らせる仕組みは増えているのです。
また、「血のつながり」だけが支えになるわけではありません。友人や近所とのつながりも大切に。
趣味の仲間、地域活動の友人など、日常的に交流できる人がいることは、孤独の不安を和らげる大きな力になります。
こうして考えると、「子どもがいないと老後は不安」というのは一面的な見方に過ぎません。むしろ、子どもがいてもいなくても、自分自身で老後の安心を得るためのつながりを作れるかが重要なのです。
「自分らしい老後」を選び取る
老後に向けての備えは、「子どもに頼るかどうか」ではなく「自分がどんな暮らしを望むか」から考えましょう。
たとえば「できるだけ長く元気に、自分のことは自分でしたい」と思うなら、健康維持に向けた運動や食生活を大切にすることが第一歩。
「安心できる住まいが欲しい」と思うなら、持ち家を活かすのか、賃貸に住み替えるのか、シニア向け住宅を選ぶのかなどを検討できる。
「人とのつながりを大切にしたい」と感じるなら、地域の活動や趣味のサークルに参加してみるのもいいでしょう。
大切なのは、他人の価値観に縛られないこと。「子どもがいれば安心」という社会の常識に違和感を覚えるなら、その感覚を大事にしてください。
老後の安心は「自分らしい生き方」を選んでいくなかで、自然と形づくられていくものです。
子どもに委ねない、自分で築く安心
「子どもがいないと老後が不安」という考えは、長年にわたり根付いている世間一般の価値観に過ぎません。
現実には、子どもがいても安心できない人もいれば、子どもがいなくても豊かに暮らす人もいる。大切なのは子どもの有無ではなく、自分でどう安心の土台を築くかです。
経済的な準備、健康への投資、人とのつながりづくり……これらを1つずつ整えていけば、老後の不安はぐっと軽くなるのではないでしょうか。
そして、その過程は「老後の備え」であると同時に、「今をより充実させる生き方」にもつながるはずです。
子どもに負担をかけるのではなく、自分で自分を支える選択をする。その姿勢こそが、これからの時代にふさわしい「安心のカタチ」なのかもしれません。
