「子どもを持たないと将来後悔するよ」って余計なお世話

子どもを持たないと将来後悔するよ——こんな言葉にモヤモヤしたことはありませんか？

近年では結婚しても子どもを持たないという選択をする人は少なくありません。それなのに、いまだに“子どもを持つのが当たり前”という価値観は根強く残っていて、あたかも当然のように押しつけられる……

子どもを持たない人生を選んだ人が直面する「子どもを持たないと後悔する」という偏見やプレッシャーへの向き合い方、自分らしい生き方を実現するための考え方について、一緒に考えていきましょう。

「将来後悔するよ」は誰かの主観にすぎない

「子どもを持たないと将来後悔するよ」

この言葉は一見すると親切心から出ているように見えるかもしれません。しかし、実際には「私がこうだったから、あなたもそうなるだろう」という極めて主観的な視点から生まれています。

人の人生はそれぞれ異なり、「子どもがいてよかった」と感じる人もいれば、「もっと別の人生を送りたかった」と感じる人もいる——後悔するかどうかなんて、未来になってみないと誰にもわからないのです。

それなのに、まるで当然のように語られる「子どもを持たないと後悔する」という言葉——聞く側にとってはプレッシャー以外の何物でもないでしょう。

「子どもを生めば老後が安心」「家族が増えれば幸せ」という前提のもとで生まれているその“アドバイス”。果たして本当に子どもを生むことだけが老後の安心や幸せにつながるのでしょうか。

「将来後悔するかも」と感じるのは、自分自身のなかで起こる可能性のある不安であって、他人に決めつけられることではないはずです。

「子どもを持たないと将来寂しいよ」なんて言葉も耳にすることがあります。

しかし、“寂しさ”や“孤独”といった感情は、たとえ子どもがいても完全に避けられるものではないはず——むしろ、子どもとの関係がうまくいかなかったり、地理的・心理的な距離ができてしまったりすることで、孤独を感じる人も多く存在します。

大切なのは、“子どもがいない人生＝孤独”という思い込みを手放すこと。近年で人と人のつながり方は多様になっていて、友人・パートナー・趣味仲間・オンラインでの交流・地域コミュニティなど、血縁に限らず心を通わせる関係性は無数に存在します。

そもそも「老後の寂しさを埋めるために子どもを生む」という考え方には違和感があります。子どもは“自分の孤独を埋める道具”ではありませんし、そんな動機で生まれてきた子どもがそれを知ったときにどう感じるでしょうか。

孤独と向き合う力を育てることや自分を大切にできる環境づくりこそが、本当の“老後対策”なのかもしれません。

「孫の顔が見たい」

「子どもを持たないなんて親不孝だよ」

こんな言葉に胸が痛んだ経験があるかもしれません。自分は何をいわれても平気だと思っていても、「親の期待に応えられていないかもしれない」と考えたとき、「私が間違っているのかな」と、自分の選択に自信がなくなってしまうことがあるでしょう。

けれども、「子どもを持つかどうか」はあくまで自分自身の人生に対する選択。それを“親のため”に決めるものではないはずです。

仮に子どもを持っても、無理をして苦しんでいる自分の姿を見せたなら、親は本当に満足するでしょうか。

そもそも本当に親を思うなら、形式的な“孫”よりも幸せに生きている“自分の姿”を見せることこそが、最大の親孝行だと思うのです。

「親の望み」以前に、まず「自分の人生をどう生きたいか」を考える権利があります。親からのプレッシャーは確かに大きいもの。でも、「親を大切にすること」と「親の価値観や期待に応えること」は、決してイコールではないのです。

親のために子どもを持つという選択ではなく、親からもらった命をどう活かすか、自分なりの答えを出すこと。それが、親への感謝を表す方法なのかもしれません。

子どもを持たない選択をすると「得られないもの」にフォーカスされがち。そこで、一度「得られるもの」に目を向けてみましょう。

たとえば、時間的な自由。週末の予定を立てやすかったり、自分のペースで仕事や趣味に没頭できたり。経済的な面においても、子育てにかかる膨大な費用を自分の幸せにつながる投資に回すことができる。

そして、精神的にも「親になる責任」や「子どもの将来に対する不安」を抱える必要がなく、自分の幸せや成長に集中しやすいかもしれません。

また、自分の子どもではなくとも、地域での活動やボランティア、後輩のサポート、ペットの飼育といったカタチでも、誰かを支える・育てる喜びを見いだすことはできます。

子どもを持たない人生は“不足”しているわけではなく、自分なりの“選択”を積み重ねただけ。その先には、他の誰とも違う唯一無二のストーリーと幸せがあるはずです。

「子どもを持たないと将来後悔するよ」という誰かの主観から生まれた言葉。しかし、自分以外の誰かがその言葉に責任を持ってくれることはありません。自分の人生に責任を持てるのは自分だけ。

自分が納得して選択した人生は、誰に何をいわれようと誇っていいものであり、そんな選択をすることこそが、後悔の少ない人生にする大きな要素ではないでしょうか。

世間一般でいう普通の価値観が「子どもを持つ人生」なら、「子どもを持たない人生」を選ぶのは勇気がいることかもしれません。それでも、周囲のプレッシャー・親からの期待・社会の視線をかき分けて、自分の価値観を貫いていいと思うのです。

「周囲にどう見られるか」ではなく「自分がどう生きたいか」、この問いに向き合いながら日々の選択を積み重ねていくこと。そうすることで、あなたにとっての本当の“正解”や“幸せ”がカタチになっていくはずです。