「結婚したら子どもを持つのが当たり前」
「子どもを持たないのは、子どもが嫌いだからだろう」
そんな言葉をかけられたり、暗黙の空気を感じたりして、居心地の悪さを覚えたことはありませんか？
人生の選択は人それぞれ。「子どもを持たない」という選択は、必ずしも「子ども嫌い」という意味にはつながりません。それなのに、周囲からの一方的な解釈や決めつけに心がざわつく人は少なくないはず。
「子どもを持たない＝子ども嫌い」という世間一般の決めつけを見つめ直し、自分らしい選択にもっと自信を持つためのヒントについて考えていきましょう。
子どもを持たない選択に潜む「誤解」
「子どもはいないの？」「作らないの？」という言葉は悪意がなくても、ときに人の心を傷つける。そして、この言葉の背景には「結婚したら子どもを持つものだ」という世間一般の価値観があります。
「結婚＝子ども」という強く根付いた価値観によって、「子どもを持たない」という選択は例外扱いされ、理由を求められる。さらに、その選択が「子ども嫌い」という短絡的なラベルに結びつけられてしまうことも……。
けれど、実際には子どもが好きであっても持たない人、子どもと関わる仕事に喜びを見いだす人もいます。つまり、「子どもを持たない」という選択と「子ども嫌い」という感情は、まったく関係ないということ。
子どもを持たないという選択の背景は、経済面やキャリア、健康面など、人それぞれです。そこに「好きか嫌いか」という2択を押しつけるのは、あまりにも不自然ではないでしょうか。
子どもを持たない人も、子どもを大切に思える
「子どもを持たない」と聞くと、すぐに「じゃあ子どもと関わりたくないのね」と結論づける人がいます。
しかし、現実には子どもを持たない人のなかにも、子どもの成長を喜んだり、近所や友人の子どもと遊んだり、教育や福祉の分野で仕事をしたりする人はたくさんいる。
たとえば、教員や保育士、医療従事者など、日常的に子どもと関わる職業の人のなかにも、自ら子どもを持たない選択をする人はいます。
彼らは強い愛情と責任感を持って子どもと日々向き合っているはず。それでも「子どもを持たない＝子ども嫌い」という偏見がつきまとうのは不思議なことです。
ここで重要なのは、「子どもを育てること」と「子どもを大切に思うこと」はイコールではない、という視点。
血のつながりがなくても、親という立場でなくても、子どもを思いやり支えることはできます。私たちの社会はその多様な関わり方をもっと認めるべきなのです。
「普通」という枠組みに縛られない生き方
「結婚したら子どもを持つもの」という価値観は、長きにわたって日本社会に強く根づいてきました。学校やメディアでも「結婚して親になるのが人生の自然な流れ」と描かれることが多く、それ以外の道はどこか「変わった生き方」と見なされがちです。
けれど、「普通」という言葉は時代や文化によって簡単に変わるもの。かつては「女性は家庭に入るのが普通」でしたが、今では多くの女性が仕事を続けることが当たり前になりました。
セクシャルマイノリティへの理解が広がるにつれ、結婚のカタチや家族のカタチも少しずつ多様化しています。
それと同じように、「子どもを持つことが当たり前」という考え方も、少しずつ揺らぎつつあります。たとえば、DINKs。あえて子どもを持たない選択をした夫婦のことです。
理由はどうであれ「子どもを持たない」は「選択肢のひとつ」として受け止められるべきでしょう。
大切なのは「普通」という枠組みに縛られるのではなく、自分がどんな人生を望むのかに耳を傾けること。それが自分らしく生きる第一歩になるはずです。
子どもを持つことと同じくらい尊重されるべき選択
「子どもを持つ」ことは、もちろん尊い選択です。家族を築き、命をつなぎ、子どもの成長を見守る経験は、他に代えがたいものでしょう。
しかし、「子どもを持たない」ことも同じように尊重されるべき選択です。
それぞれの人生には、責任と喜びがある。子どもを持つ人は育てる責任と喜びを背負う一方、子どもを持たない人は別の責任と喜びを見つけ、社会に貢献していきます。そのカタチは違えど、どちらも同じように価値があるもの。
また、子どもを持たない人が社会にいることで、支え合いの幅が広がることもあります。友人や親戚の子どもを助けたり、地域活動に参加したり、子どもの教育や文化活動に関わったり……「血のつながり」に縛られない新しいカタチのサポートが可能になります。
だからこそ、「子どもを持たない」というだけで「自己中心的」や「子ども嫌い」と決めつけられることがあっても、自分の選択に自信を持っていいのです。
誰もが安心して自分らしい選択ができるように
「子どもを持つかどうか」によって人を分ける社会ではなく、どんな選択も尊重され、安心して語れる社会であるべきだと思うのです。
子どもを持たない人が、子どもに対する愛情を持っていたり、逆に子どもを持っている人のなかでも、子どもとの関わり方に悩み距離を感じる人もいます。つまり「子どもを持つか持たないか」と「子どもが好きか嫌いか」はまったく関係のないこと。
周りに「子どもを持たない＝子ども嫌い」という思い込みのある人がいるかもしれません。だからといって、罪悪感を抱いたり自分の選択を迷ったりする必要もない。
子どもを持つ人も、持たない人も、子どもが好きな人も、そうでない人も、それぞれが「自分の人生はこうありたい」と思える道を選ぶことが大切。
多様な価値観や立場の人が共存し、互いに尊重し合うことで、社会はより豊かになるのではないでしょうか。
