気づけば、私のマッチングアプリ歴は3年になっていた。
大学卒業後に軽い気持ちで登録していたけれど、30代に入り、“ちゃんとした相手を探さなきゃ”という焦りが胸を締めつけるようになり、本格的にアプリを使うようになった。
積極的にやり取りをして、ご飯に行って、疲れてアプリを一度削除して、また戻ってきて……。街コンや婚活イベントにも足を運んだ。
そんな「出会いの波」にひたすら身を投げ続けた3年間のなかで、実際に交際に発展した人も数名いた。けれど、誰と付き合っても、3ヶ月から半年ほどで別れがくる。そのループが続いた。
「なんで私はうまくいかないんだろう?」
最初はそう思っていた。でも途中から、問いが変わった。
「そもそも私は、恋愛をそんなに重要視していないのかもしれない」と。
ここでは、私が3年間のアプリ活動で感じた“疲弊の正体”と、恋愛の優先順位が下がっていった理由を、ひとつずつ言葉にしてみたい。
インスタントな出会いは、インスタントに終わる
マッチングアプリは便利だ。スクロールするだけで相手が表示され、写真と数行のプロフィールからなんとなく“合う・合わない”を判断できてしまう。
でも、この「手軽さ」こそが、敵だったのだと思う。
スペックや条件で相手を選ぶと、その人の“奥底の質感”が見えないまま恋人関係に入ってしまう。メッセージでは誠実そうに見えても、実際に会うと一緒にいるときの沈黙の感じ方や、ちょっとイラッとするポイント、生活習慣の温度感など、プロフィールには絶対に書かれない部分がどんどん露わになっていく。
会う前には「合いそうだな」と思っていたのに、付き合ってみると「あれ?」が積み重なり、お別れまで一直線。
“手軽に出会える”の裏側には、“手軽に別れられる”という脆さがある。
私はその事実に、何度も心を削られてしまった。
最初から「恋愛前提」で会う息苦しさ

アプリで出会う時点で、関係性は「恋愛候補」からスタートする。これが私には、とにかく向いていなかった。
初対面なのに、いきなり「この人と付き合えるか?」「身体的な相性はどうだろう?」「結婚を見据えられる相手か?」……そんなジャッジを強制される。
もっと気楽に、仕事の話とか、好きな映画とか、日々のどうでもいいことからゆっくり距離を縮めていきたいのに、“恋愛”というフィルターがすべての会話を重く、鋭くしてしまう。
しかも、恋愛前提で会うと、相手のちょっとした欠点が「致命的」に見えてしまうこともある。
本来なら、「友達として出会っていたら仲良くなれたかもしれない人」に対してさえ、恋愛基準でジャッジしてしまうから、苦しくなるのだ。
アプリが悪いわけじゃない。ただ――“恋愛モードの私”でい続けることに、限界がきていただけだ。
3年間続けて気づいた「私はアプリ向きじゃない」という事実
これは、認めるまでに時間がかかった。
アプリは合理的で、効率的で、「選ぶ/選ばれる」の速度も早い。でも私は、そのスピード感に心が追いつかなかった。
私に合うのは、イベントで知り合った人とゆっくり話す夜とか、小さな酒場で隣に座った人と気まぐれに会話が生まれる瞬間とか、同じ映画を観てたまたま感想を語り合うような、“偶然と空気”が溶け合った出会いだ。
恋愛とか結婚とか、そういうジャッジがひとまず横に置かれている関係の中で、私は初めて自然体になれる。
アプリが合わなかったのは、決して「私がダメだった」わけじゃなくて、“出会いの仕組み”が、私の恋愛スタイルと噛み合っていなかっただけだった。
そうわかった瞬間、肩の力がふっと抜けた。
恋愛の優先順位が下がった。それは敗北ではなく、成熟だった

3年の活動を経て、ようやくわかったことがある。
私は恋愛を「人生の中心」に置かなくても、生きていける。
仕事をしたり、習い事に挑戦したり、映画やドラマに浸ったり、夜中にお酒を少し飲んだり。そんな日々の積み重ねこそ、私をしっかり形づくってくれる。
もちろん、このままずっとひとりかもしれないという不安もある。ふと、未来の空白が怖くなる夜もある。
でもその恐怖さえ、今の私の“人生の味”として受け止められるようになってきた。孤独を恐れながら、それでも自分の時間を大切にしたいと思える。
恋愛があってもなくても、人生はちゃんと続いていく。そして、恋愛がなくても、十分に豊かになり得る。私はそのことを、自分自身でようやく理解した。
私と同じように、アプリに疲れた人へ。恋愛に前向きになれない自分を、責めてしまっている人へ。
どうか、その疲れは“あなたの弱さ”なんかじゃない、と気づいてほしい。
恋愛は、人生の義務じゃない。優先順位は人によって違っていいし、変化してもいい。
恋愛以外にも、私たちの人生を温めるものはたくさんある。大切なのは、自分にとっていちばん心地よいペースで生きることだ。
あなたの人生の主役は、あなた自身なのだから。






