恋愛感情や血縁に頼らない「新しい家族のかたち」として注目される友情婚。その関係を長く続けていくためには、相性だけでなく、現実的な「経済の相性」も欠かせない、と感じる。恋愛の熱量や情ではなく、“暮らしを共同で運営するチーム”としての視点が求められるからだ。
会社経営とも似た協力体制が、早い段階から求められるイメージもある、友情結婚における家計の作り方。まずはどんなことから考え始めたらいいのか、どんな対策が効果的なのかを考えてみたい。
家計の分担が「関係の形」を映す
友情婚……に限らないかもしれないけれど、ともに暮らすことを選んだ多くの人たちが、まず最初に直面する問題。それは「家計をどう分けるか」という、センシティブなお金の話である。
恋愛結婚であれば、どちらかの収入を主軸に家族を築くことも多い。だけど、友情婚ではよりフラットな関係性を望む人が多い。
生活費をすべて折半にするのか、それともお互いの収入に応じて比率を変えるのか。家賃・光熱費・食費などの共通項目だけを共有し、交際費や個人の趣味にかかる費用については、それぞれが管理するのか。
こうした取り決めは、単なる「お金の話」に留まらない。ふたりがどんな距離感で支え合い、どこまで生活を共有したいのか――その“家族観”を映し出す鏡でもある。
たとえば、同棲ではなく「同じマンションの別室」で暮らすスタイルを選ぶカップルなら、光熱費や食費は別。そのうえで、災害時や体調不良時に支え合う“セーフティネット費”として共通の口座をつくる、という工夫もできる。
結婚届や姓の変更といった制度に頼らずとも、信頼関係を“数字”で可視化する方法はいくつもあるのだ。
「浪費」「節約」よりも“価値観の近さ”が大切

お金の使い方は性格の一部だ。お金をどう使うかによって、人間性が浮き彫りになると言ってもいい。食費や旅行費、家具や家電への投資など、どこに価値を置くかは人によってまるで違う。
友情婚では恋愛的な惰性がない分、その違いが浮き彫りになりやすい。
「外食は特別な日にだけ」「旅行にはお金を惜しまない」「洗濯機は最上位モデルを買いたい」……などなど、どれも小さなズレの積み重ねが生活のストレスになっていく。
実際にフレマのイベントでも「月一のデートに2万円かかると正直負担」「節約が好きだから、必要以上に備品や消耗品のストックを買われると違和感がある」といった声が挙がっていた。
浪費家と倹約家という単純な対立構造ではなく、“どんな瞬間にお金を使うと幸せを感じるか”のすり合わせが、友情婚における経済の核なのだ。
その意味で、「お金の価値観が近いこと」は、恋愛感情よりもずっと持続可能な関係を支える要素と言えるはず。
経済的パートナーとしての信頼をどう築くか
友情婚において、経済的信頼は“感情の代替”ではなく、“土台”として機能する。
恋愛関係であれば、多少の不公平や感情的な支出があっても、「好きだから」で片づくことがある。だけど友情婚では、その曖昧さが亀裂を生みやすい。
だからこそ、定期的な家計ミーティングを開く、共通の支出記録アプリを使うなど、“透明性”を保つことが重要になる。
「お金の話はシビアになりすぎるから避けたい」と思う人も多いだろう。だけど、友情婚では“お金の話をタブーにしない関係性”こそが安心感につながるのだ。
感情の温度よりも、信頼の温度でつながるパートナーシップ――それが友情婚の本質だ。
ふたりで「将来」を運営する視点を持つ

友情婚のもう一つの現実的課題が、将来の備えだ。
病気や老後、親の介護といった“長期的なライフプラン”に、どう経済的に備えていくか。
一緒に保険に入るのか、別々に貯蓄をするのか。どちらかが働けなくなったときのサポート体制をどうするのか。
「結婚しても子どもは持たない」「別居婚を選ぶ」など、それぞれの生き方に合わせて、経済設計も柔軟に変えていく必要がある。
フレマイベントでは、「家族や恋人とは違う、でも“ともに生きる人”として責任を持ちたい」という声も多く聞かれる。
経済的な結びつきは、単なる数字の話ではなく、「あなたの人生に私も関わる」という覚悟の形でもあるのだ。
友情婚において「家計を共有する」という行為は、相手を縛るためのルールではない。むしろ、個人としての自由を尊重しながら、安心して支え合うための“仕組み”だ。そこには、恋愛や血縁に頼らない関係性ならではの誠実さがある。
感情の熱量よりも、生活を一緒に運営していく冷静さ。
「好き」ではなく「信頼」で築く人生の共同経営。
それは一見ドライに見えるかもしれないが、実はとても人間的な関係性だと思う。恋愛よりも穏やかで、家族よりもしなやかに。
お金を介して支え合う“経済パートナーシップ”の形は、これからの時代の新しい愛の形を、静かに照らしている。





