「恋人が一番」「恋愛は尊い」なんて、誰が決めたんでしょうか。
家族愛や友情、あるいは自尊心——これらの感情より恋愛感情が特別扱いされている気がする……
そんななかで、「恋愛感情がよく分からない」「恋愛に興味が持てない」と悩んでいる人は、まるで社会に取り残されたような気持ちになることがあるかもしれません。
けれど、恋愛感情は必ずしも“理解しなければならない”感情ではない。ここで立ち止まって、恋愛至上主義に疑問を抱き、感情に優劣があるのか、一緒に考えていきましょう。
恋愛感情がわからないっておかしいこと?
友人たちの会話やSNS、ドラマでは恋愛の話が当たり前のように飛び交っている。
「彼氏と旅行してきた」「付き合って1年記念なの」なんて、そんな話を聞くたびに自分の知らない世界があるのではないかと感じたことがあるかもしれません。
「誰かを好きになるって、どういうこと?」
ただ、恋愛感情がどんな感情なのかピンとこない、誰かにときめいたことがない、そもそも恋愛というものに興味が持てない——これらは決しておかしいことではありません。
人の感情は多様で、すべての人が同じ感情を経験するわけではないからです。
たとえば、他者に恋愛感情や性的欲求を抱かないアセクシャル、他者に性的欲求は抱くものの恋愛感情は抱かないアロマンティックなど、この世には他者に恋愛感情を抱かないセクシャリティが存在します。
恋愛感情がないことは「欠けている」ことではなく、「あなたらしさ」の一部にすぎない。誰かを好きになることだけが「人間らしさ」ではないのです。
恋人が一番——恋愛至上主義がもたらす圧力

誕生日やバレンタイン、クリスマス——これらのイベントはいつから「恋人と過ごすもの」になったのでしょうか。
ドラマの主人公はたいてい恋をしているし、映画も音楽も「恋」をテーマにしているものが多い。
恋人がいないと「寂しい」「かわいそう」と見なされ、恋愛に興味が持てないと「何か問題があるのでは?」と疑われることすらある……
このような価値観を「恋愛至上主義」と呼びます。
実際日本にも恋愛至上主義的な考え方が根付いていて、恋愛こそが人生の中心だととらえる人は少なくない。
恋愛こそが最も尊く、深い人間関係だという無意識の思い込み。そして、その思い込みの裏には、「恋愛感情はわかって当たり前」という価値観に押しつぶされそうな人たちがいる。
家族への愛情、友人との絆、同僚との信頼関係、自分の人生に誇りを持つ自尊心——これらはすべて、人生を豊かにする「感情」です。
それなのに、なぜ恋愛感情だけが特別扱いされるのか。そこに改めて疑問を持つ必要があるのかもしれません。
感情の優劣なんて、誰が決めた?
「友人より恋人との約束が優先」「友情より恋愛感情をとるのは当然」、こんな言葉や考え方が当たり前になっている。
そんななかで、「恋愛ってそこまで大事?」と疑問を抱いたことはないでしょうか。恋愛感情が一番で、それ以外の感情は恋愛感情に劣っているものなのでしょうか。
きっと感情に優劣をつけているのは、世間一般の価値観に過ぎません。
どの感情が「優れている」とか「正しい」とか、そういった判断はこれまで蓄積されてきた文化的・歴史的な背景があると思うのです。
たとえば、クリスマス。日本では恋人と過ごすことが“普通”とされていますが、アメリカやヨーロッパ圏の国では家族と過ごすことが“普通”とされています。
つまり、「恋愛が一番」という価値観も絶対ではない——ある時代・ある社会の傾向にすぎないのです。
あなたが「恋愛より友情が大切」と感じるなら、それはあなたの価値観として尊重されるべきもの。
感情に優劣はありません。あるのは「自分が何を大切にしているか」だけです。
「恋愛しない自分」を受容する——その先に感じる幸せ

恋愛感情がわからない、恋愛に興味が持てない——その感覚はあなたの“個性”であり、世間一般の価値観と異なるからといって、自分で自分を否定する必要はありません。
誰かを「恋愛対象」として見るよりも、その人の考え方や生き方に共感したり尊敬したり、ほどよい距離感のある人間関係に安心したり——そんな感覚が、あなたにとっては自然なのかもしれません。
恋愛しない自分を受け入れることで、あなたにしか見えない世界があるはずです。
たとえば、一人旅をして出会った人や風景に癒される幸せ。趣味のあう友人と月に1回美味しいものを食べて得られる幸せ。
このように、恋愛感情がわからなくても、恋愛をしなくても、あなただけの幸せを見つけることはできる。
そして、それらは恋愛と同じくらい、もしかするとそれ以上にあなたを深く愛し、成長させることにつながるかもしれません。
恋愛だけが人生じゃない、あなたのその感情を大切に
恋愛という感情は素晴らしいものかもしれません。けれど、恋愛感情が「一番」である必要はないし、すべての人に共通することもでもない。
家族の愛情に安心した日があれば、友情に救われた日もあって、見知らぬ誰かの優しさに心が温まった日がある。こうした一つひとつの感情が、あなたの人生を彩っています。
だからこそ、感情は優劣を決めたり比べたりするものではありません。
どの感情もあなたのなかで大切に育まれてきたもの。恋愛感情がわからなくたって、何かが欠けているわけではない。
そして、恋愛だけが人生ではありません。世間一般の価値観にとらわれず、恋愛しない自分を受け入れ、あなたが大切にしたい感情は何か、自分自身に問いかけてみてください。