「子どもを持つことが当たり前」といわれる世の中で、子どもを持たない人生を選んだ人は、ときに「何かが足りない人」「一人前ではない人」と扱われることがあります。
子どもを持った人が一人前で、子どもを持っていない人は一人前ではない———本当に子どもの有無で人間の成熟度は決まるのでしょうか。
「子どもを持たない」「親にならない」という選択肢を取った人が、「親になってこそ一人前」という価値観に感じる違和感について、一緒に考えていきましょう。
「親になってこそ一人前」という価値観はどこから?
日本には、「子どもを持つことが当たり前」「家庭を持って一人前」という言葉が、根強く存在しています。その背景には、人口増加への期待や労働力の確保といった社会的な側面から、老後の面倒を子どもに見てもらうといった文化的な側面があるでしょう。
結婚して、子どもを育てることが「家族の理想像」として考えられ、「家庭を持つこと=幸せ」という構図が世間一般の普通になっていた気がします。
そのため、家庭や子どもを持たない生き方は、「幸せじゃない」「かわいそう」と捉えられてしまうことがあるのです。
しかし、社会の価値観は時代によって変わるもの。近年ではライフスタイルや家族のカタチが多様化し、人それぞれが理想とする生き方が広く認められるようになってきました。
ただ、古い価値観が残っているのも事実。その古い価値観と自分が望む生き方の狭間で、息苦しさを感じている人が確かにいるのです。
子どもの有無で人の成長は測れない

「親になってこそ一人前」という言葉の裏には、「親になって初めて分かることがある」というものがあります。確かに、子育てという責任を担うことで、学びや気づきがあるのは事実でしょう。
しかし、それは「親になったからこそ得られる経験」であって、「人間の成熟度を判断する基準」ではありません。
子どもを持たなくても、誰かと向き合い、関わっていくなかで成長することもあります。それが、仕事なのか、趣味なのか、ボランティアや友達関係なのか———人それぞれの経験や人間関係を通じて、人間としての深みや広がりを持つことが、親になることと同等に大きな成長をもたらしてくれるはずです。
無意識に発される「親になってこそ」という言葉が、子どもを持たないという選択をした人を苦しめているかもしれません。人生において、全員にとっての正解なんてない。人それぞれの立場や選択によって、人は成長していくものです。
親にならない自分への焦りや孤独も…
親にならない選択をしたとき、世間一般の価値観とのギャップを感じたり、周囲の目を気にしてしまう瞬間があるかもしれません。
友達や職場の同僚が次々と親になり、「うちの子が」「保育園が」「受験が」と、親ならではの話題に入れない。親族から「子どもはまだ?」と聞かれるたびに、笑ってごまかしながらも、心の奥では「ごめんね」といっている。
そんな自分に気づいて、ふと孤独を感じてしまうこともあるのではないでしょうか。「本当にこのままでいいのか」と、自分の選択に迷いが生じることもあるかもしれません。
しかし、その感情は、あなたのなかにある「世間一般の価値観に沿った生き方こそが正解」という意識から生まれています。
世間一般の価値観とあなたの選択が違っていても、それでいいのです。誰かにとっての正解が、あなたにとっての正解とは限らない。あなたの選択が間違っているわけでも、何かが欠けているわけでもありません。
周囲の声に飲み込まれそうなときのヒント
「子どもを持つことが当たり前」という価値観が残る日本では、子どもを持たない選択をしたとき、周囲からの「なぜ?」という問いかけにさらされることがあるでしょう。
「まだ間に合うんじゃない?」「一人は寂しくない?」といった言葉は、悪意がなくとも、あなたの心をざわつかせるかもしれません。
人生は個人のものであって、誰かの期待に応えるために生きるものではない———頭ではわかっていても、「理解してもらえない」「共感してもらえない」と疲弊してしまう。
そんなときは、同じ価値観を持つ仲間を見つけたり、自分の生き方を肯定してくれる言葉や環境に身を置いたりすることが、あなたの心を守るひとつの方法になります。
仲間を見つけたり環境を変えたりすることにハードルが高く感じられる人は、「世間一般の価値観に合わせる必要はない」「周囲の期待に応えるだけの人生は望んでいない」と、自分に言い聞かせるだけでも、心が軽くなるかもしれません。
親かどうかではなく、どう生きたいかを大切に

親にならないという選択を大切にしたい反面、どこかで周囲の声に不安や悩みを抱えてしまうことがあるかもしれません。
でも、親になるかならないかだけで、あなたの人生の価値が変わるわけではない。子どもを持たなくても、誰かと豊かな関係を築き、成長していく人生は、「一人前」といえるものです。
「親かどうか」ではなく、「どう生きたいか」「どうありたいか」を軸にして生きることが大切。その軸がしっかりしていれば、周囲の価値観にとらわれることなく、自分の人生に誇りを持てるようになるはずです。
あなたの人生はあなたの選択で決まっていきます。誰かの正解ではなく、あなただけの正解を見つけ、あなたらしいライフスタイルを実現してください。